移民国籍法212条では、下記項目を外国人の入国不適格事由としています。
① 健康状態に関する要件 Inadmissibility Due to Health
② 犯罪に関する要件 Inadmissibility due to criminal reasons
③ 国家の治安に関する要件 Inadmissibility due to national security reasons
④ 公共の負担になる外国人 Inadmissibility due to likelihood of becoming a public charge
⑤ 永住者に対する労働証明書及び資格の欠如 Inadmissibility due to lack of labor certification
⑥ 不法入国者および違法移民入国 Illegal Entrants and Immigration Violators
⑦ 書類上の要件Documentation Requirements
⑧ アメリカ市民になれない者Ineligible for Citizenship
⑨ 過去に強制退去を受けたもの Aliens Previously Removed
⑩ その他Miscellaneous(一夫多妻者Practicing Polygamist, 自活できない者の保護者Guardian Required to Accompany Helpless, 国際的幼児誘拐者International Child Abduction, 不法投票した者Unlawful Voters, 税金支払回避のために市民権を放棄した者Former Citizens Who Renounced Citizenship to Avoid Taxation)
上記事由に該当する外国人は米国への入国は出来ない(またはビザの発給の対象とならない)とされています。
当事務所へのご相談で多いのが上記②、⑦に該当するケースです。
そして、「②犯罪に関する要件 Inadmissibility due to criminal reasons」において特に多いのが、ESTA申請時に犯罪歴をNOと申告し、ESTA認証後米国入国時に犯罪歴が発覚し、入国拒否となるケースです。
この場合、ESTAで虚偽の申告をし不正に入国を試みた外国人として、以降一定の期間入国禁止となるまたは永久に米国に入国できなくなる事態につながります。米国入国時に申告義務のある犯罪歴について、犯罪発生からの経年により申告が不要になるという条件は存在しません。現地で入国拒否となり生涯米国の地を踏めなくなる事態を避けるために犯罪歴の申告は虚偽なく行う必要があります。
その他に入国拒否を受けるケースとして多いのが「⑦書類上の要件Documentation Requirements」です。
ESTAで渡航した際に、入国目的として観光または米国を源泉とする報酬の発生しない商用目的であるべきところを入国審査時に移民審査官よりそれらの目的以外で入国を試みていると判断され入国拒否を受ける場合です。
「観光目的と申告したが、不法就労を疑われた」「頻繁に米国での長期滞在を繰り返したため、米国での不法滞在を疑われた」場合が特に多い事例です。この場合は、就労または米国に合法的に滞在するために、適切な書類つまりビザを所持していなかったために上記⑦に該当し入国を拒否されます。
ESTAで入国し不法就労や不法滞在を疑われた場合、移民国籍法(INA)212(a)(7)(A)に基づき入国拒否を受けることになります。もしビザを所持しているにもかかわらず、そのビザの目的と実際の入国目的が異なると判断され入国拒否を受けた場合、INA212(a)(7)(B)~に基づき入国拒否を受けますが、いずれにせよ入国拒否を受けた後に再度米国を入国するためには適切なビザが必要となります。
また、特に近年多くなっている事例がINA212(a)(2)(D)(i)に基づき入国を拒否されるケースです。アメリカで売春行為に関わることを目的として入国を試みていると判断された場合に適用される条文です。この条文が適用されると入国拒否の判断を受け、米国を離れた日から10年間は入国禁止とされています。以降10年間は非移民ビザの発行は極めて困難となります。この条文を適用され入国拒否を受けた方の多くが、ESTAを利用し頻繁に渡航を繰り返している、または、長期滞在を伴う渡航を1年間に2回以上行っているなどの経緯があります。繰り返しになりますが、ESTAで頻繁に長期滞在を伴う渡航をされている方は注意されたほうがいいでしょう。